新型コロナウイルスの感染拡大によって、首都圏1都3県に2度目の緊急事態宣言が発令された。政府による時短営業や夜間の外出自粛要請に対して、外食や百貨店などの小売業界はどう動いたのか。感染拡大防止をめぐって、場当たり的な国の対策に事業者が苦慮し不満を募らせる実情を探った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽、中村正毅)
飲食店の経営者は我慢の限界
「一律6万円」に批判が相次ぐ
「この1年間、耐え続けてきた。借り入れも相当膨らんでいる。生き残るためには、営業せざるを得ないかもしれない」
東京・千葉を中心に70店舗の飲食店を経営する一家ダイニングプロジェクトの武長太郎社長は、時短要請には従わず、夜間営業を続ける可能性に言及した。飲食店の経営者はすでに我慢の限界だというのだ。
新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い発出された2回目の緊急事態宣言。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県では、1月12日(酒類提供の店舗は1月8日)から飲食店に対して午後8時までの時短営業が要請された。
ファミリーレストラン・サイゼリヤやカフェ・スターバックスコーヒーをはじめ、大手チェーンはおおむね午後8時までの時短要請に従う方針だ。
緊急事態宣言の再発令を受け、テーブルチェックが実施したアンケート(1月8日時点)によれば、81.5%の企業が時短要請に従うという。
その一方で、経営者の胸の内は苦しい。ある飲食店経営者は、「飲食店以外への要請もしっかりやってほしい」。別の経営者も、「外国人の入国は認めるのに、何故飲食業にペナルティを課すのか」と、飲食店だけをターゲットにした政府の施策を批判する。
時短要請に応じた飲食店などの事業者には、店舗ごとに1日あたり6万円の協力金が支給され、最大で180万円となる。ただし、全ての業態・規模で「一律6万円」となることに対し、業界内からは疑問の声が相次いでいる。
例えば、郊外の小規模店舗は家賃負担も人件費も低いため、「緊急事態宣言中に休業すれば通常の営業よりももうかる」(業界関係者)と明かす。
一方、午後8時以降が稼ぎ時の大箱の居酒屋にとって、6万円は焼け石に水だ。都心の駅前立地の場合、一坪当たりの家賃は3万円前後とされる。100坪の店舗の1カ月の家賃は、300万円超に上る計算で、時短営業に従い180万円をもらったとしても、家賃さえ払えないのが実情だ。
20年にすでに不動産オーナーと家賃減額交渉を行ったある外食大手首脳は、「これ以上の減額は無理」とあきらめ顔だ。
駅前の雑居ビルを見上げれば、空室が目立つようになってきた。2回目の緊急事態宣言でさらなる飲食店の閉店は必至だ。
外食業界には強烈な逆風が吹き荒れるものの、数少ない「勝ち組」は存在する。